私は男子テニス部のマネージャー。もちろん、テニスが好きで始めた。だから、たまにはつらい時もあるけど、部活は毎日楽しい。
さらに、私は同じ部の仁王先輩を好きになった。それにより、楽しさは倍増ってところだ。



「こんにちは!」

「こんにちは、さん。・・・仁王はもうすぐ来るよね、柳生?」

「えぇ、そうだと思います。」

「幸村部長!私は何も・・・。」

「そうだな・・・。俺のデータによれば、あと1分以内に来るだろう。」

「柳先輩まで・・・!」



そして、そんな私の気持ちは、先輩方にバレバレのようだ。



「よっ、!何の話してんだ?」

「切原くん!こんにちは。何でもないよ。」

「何だよー。俺にも教えてくれたっていいじゃん!何か、楽しそうに喋ってたみたいだけど?」

「気のせい、気のせい。」

「んなわけあるかー!」



きっと、切原くんも知っているんだと思う。・・・私って、そんなにわかりやすいのかな。とにかく、そのことを知って、私をからかう人は多く、切原くんも、その1人というわけだ。特に、切原くんは同い年だからか、先輩方と比べて遠慮がない。今も、教えろ教えろと、せがんでくる。・・・絶対、何の話してたか知ってるくせにー!



「何でもいいでしょ!」

「いーや、良くない!つーか、何でもいいなら、俺に話してくれたっていいだろ〜?」

「イ・ヤ!」

「そう照れんなって。俺との仲じゃん。」

「私と切原くんの間には、部活の仲間という関係しかありません。」

「そうケチケチすんなって!ほら、教えないと・・・。」



そう言って、切原くんの手が私の頭上に伸びてきたとき、それを横から阻止する人が居た。



「その辺にしときんしゃい、赤也。」

「仁王先輩・・・!」

「やっと来たんスか、仁王先輩。」



それを阻止してくださったのは、私が1番待っていた仁王先輩だった。・・・本当に1分以内だったとか、そんなことを思う前に、ちゃんと挨拶しなくっちゃ!



「仁王先輩、こんにちは!」

「あぁ。こんにちは、。」

「それと、切原くんを止めてくださって、ありがとうございます。」

「・・・いや。」



今の仁王先輩の返事。少し間があったような気がするんだけど・・・。どうかされたんだろうか?そう思って、訊ねようとしたとき。それは切原くんによって遮られた。



「で、。何の話してたわけ??」

「なっ・・・なんで、そんなこと言うの?!!」

「だって、気になるじゃん。ね、仁王先輩も思いますよね??」

「ん?何か面白い話でもしとったんか?」

「そうだと思うんスよー。でも、が教えてくれなくて。」



ちょ、ちょ、ちょっと待ってよ・・・!!!仁王先輩の前でも、まだ続けるわけ?!!切原くん、それはないよ・・・。



「何でもないって言ってるでしょ!!特に話すことでもないの。はい!部活始めるよ!」

「ちぇー。ま、しゃーねーかー。」



そう言いながら、切原くんはニヤニヤしながら、その場を離れた。・・・せめて、仁王先輩の前ではやめてよね!



。」

「・・・はい、何でしょう?仁王先輩。」

「本当に何でもない話だったんか?」

「仁王先輩まで・・・!!切原くんの言うことなんて、気にしないでください・・・!」

「でも、赤也は何か知っちょる様子じゃったけど?」



・・・ほら、こういうことになるんだからー!!切原くん、覚えておいてよ・・・!!



「えぇっと・・・。本当に何もなくて、ですね・・・。」

「俺には言えんことなんか・・・?」

「いえ!そういうわけではなく・・・。ただ・・・。」

「ただ?」

「あのー・・・・・・・・・。あと、仁王先輩だけ来ていらっしゃらなかったので、もう来られるかな、という話です・・・。」



仁王先輩が少し寂しそうに訊ねられたから、私も隠し通せなくなった。だって・・・大好きな人に、そんな顔をさせたくないもの。



「・・・そうか。無理矢理訊きだしてすまんかったな。」

「いえいえ!そんなことないです・・・!私こそ、変に隠すようなことして、すみませんでした。」

「いや、えぇんじゃよ。気にしなさんな。」

「はい、ありがとうございます!それじゃ、部活、始めましょうか。」



とは言え、説明したことで、「なんで、そんなことを隠してたのか?」と聞かれたら、私はどうしようもなかったと思う。そればっかりは答えられないし・・・。でも、とりあえず、仁王先輩はこの返答で納得してくださったみたいで、何とか上手く誤魔化せた。よかった。

さて、そんなやり取りもあった後、いつも通りの部活を始めた。私は皆さんの練習のための準備をしたり、ドリンクやタオルを渡したり・・・。そして、練習で使用したスコアボードを片付けているときだった。



。・・・お疲れさん。」

「仁王先輩!お疲れ様です。」



片付けている最中の私の後ろから、仁王さんが声をかけてくださった。



「もう片付けは終わってしもうたか。」

「え?えぇ・・・これで終わりです。もしかして、まだ必要なもの、ありました?」

「いや、俺はを手伝いに来たんよ。でも、もう俺の出番は無いみたいじゃな。」

「その御気持ちだけでも嬉しいです。ありがとうございます。でも、これは私の仕事ですから・・・。仁王先輩はゆっくり休んでくださいね?」

「あぁ・・・ありがと。本当、は・・・。」

「私は・・・何ですか??」

「可愛いのう。」



・・・・・・・・・。私の思考は、一瞬ストップした。・・・先輩、可愛いって・・・私に言ってらっしゃるんですか?!!



「そんなことないです!」

「いやいや、大いにある。」

「大いにありません!間違ってますって!」

「可愛いもんを可愛いと愛でて、何が悪いんじゃ?」



そりゃ、私が可愛ければ、それは正しいですけど・・・。私なんて、全然可愛くないですもん・・・!!周りの子の方が断然、可愛いですから!!!



「もっと他の女性を褒めた方が正当だと思います。」

「お前さんを褒めずして、何を褒めればよいのやら・・・。」

「・・・・・・・・・よく、そんな言葉が次々と出てきますね。」

「思ったことを口にしてるだけじゃ。」

「またまた・・・。あまり、からかわないでください・・・。」

「からかっとらん。本気じゃ、本気。」



それが本気だとは思わないけど・・・。これ以上、何を言っても無駄だと私は思った。



「そうですか・・・。じゃあ、素直に受け取っておきます。」

「そうそう。褒め言葉は素直に受け取っとくもんじゃよ。」



そう仰りながら、仁王先輩は私の頭を撫でてくださった。正直、恥ずかしいけど・・・嬉しいと思ってしまうのも事実。というわけで、私はもっと素直に受け取っておくことにした。



「ありがとうございます!」



笑顔でそう言うと、仁王先輩が少し驚いていらっしゃるようだった。・・・あれ、もしかして、先輩って・・・素直に返されると弱いんですか??さっきもそうだけど、どちらかと言えば、仁王先輩も私をからかう側の人だ。でも、こうやって、からかいにも素直に応じれば・・・。なるほど、これはいい収穫だ!



「仁王先輩が褒めてくださって、とても嬉しいです。」



追い討ちをかけるように、さらに私がそう言えば、仁王先輩の動きが少し固まった。・・・やった!作戦成功!!
・・・と思っていたけれど。すぐに、仁王先輩は普段通りに戻られた。



「そうかそうか。・・・そうじゃ、。そんな可愛いにお願いがあるんじゃけど・・・。聞いてくれんか?」

「・・・何ですか?」

「俺と付き合ってくれんか?」

「・・・・・・・・・・・・えぇ?!!!」

のことが好きなんじゃよ。さっきだって、だから手伝いたいと思うたし・・・。もっと言うんなら、さっき、赤也と仲良くしてたんもあまり気分が良いとは思えんかったしな。」



・・・これも、からかいの1つだろうか。でも、さすがに、こんなことで嘘を吐くような方じゃないし・・・。それに、信じる、信じないにしても、その御言葉を聞いただけで、私の顔はどんどん赤くなっていた。
そんな私に対して、仁王先輩は。



「・・・俺のこと好きじゃろ、?」



ズルイ・・・。やっぱり、からかわれてる・・・。でも、たぶん嘘ではないはず・・・。なら、さっき私が収穫した情報を活かしてやるんだからー!!!



「はい、大好きです!」



私がそう応えると、仁王先輩は少し動揺された。・・・やったね!



「・・・・・・そう素直に言われると、何だか照れくさいのう。」

「でしょ?仁王先輩って、いつも私をからかう割に、私が素直に答えると、意外と弱いですよね!」

「・・・そうかもな。・・・で、それを知ってて、そうした、と?」

「はい。私ばかりが踊らされてるみたいでしたから・・・たまには仕返しを、と。」

「それは、それは・・・。じゃあ、こっちも有り難くお返しをせんとなぁ・・・?」



嬉しそうにしていた私に、仁王先輩はニヤリと笑われたあと、そのまま私をギュッと抱き締めた。



「・・・わっ!」

「お返しじゃ。」

「そ、それは反則です・・・!」

「別に反則なんて無いじゃろ。」

「だって!そんなの・・・ズルイじゃないですか・・・!!」

「それはお互い様ぜよ。」



絶対、違う!!完全に、私の方がからかわれてるもん・・・!やっぱり私は仁王先輩には敵わないみたいだ・・・。でも!!絶対、いつかは先輩に勝ってみせるんだから!
・・・って、別に勝ち負けはないか。それでも、私ばっかりがドキドキするのは損だもん。だから・・・。



「だったら、私も・・・。」

「ん?」



そう思って、私も勇気を出して、第一歩を踏み出すことにした。恥ずかしいのを我慢して、自分の腕を先輩の背中へ回す。



「仁王先輩。大好きです。」



・・・さて。私がこうしたことで、仁王先輩はどうされたでしょうか。私の期待通り、動揺されたでしょうか。それとも、さらに仁王先輩がやり返し、結局私が余計に焦ることになったでしょうか。
・・・・・・結果は、皆さんのご想像にお任せします・・・。













 

仁王さん、お誕生日おめでとうございます!話は全然誕生日ネタじゃないですけどね!(汗)
でも、祝う気持ちが大事ですよね!(←自分で言うな)

この話は、「遙か3」のヒノエくんを攻略した後に、書きたくなったネタです。女の子の扱いに慣れていそうな人との攻防(?)を書きたかったのです。
それで、相手は何となく仁王さんがいいと思ったので、書いてみました!そんなわけで、誕生日とは無関係の話でした(苦笑)。

('08/12/04)